Kari の AI エージェントで、中古マンション等の単位面積価格の上昇率をセグメント別で分析する
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本事例の手順は、以下の環境で動作を確認しています。
- Kari: バージョン 0.7.3 Windows
- AI プロバイダー: OpenAI ChatGPT サブスクリプション
- モデル: GPT-6.1 Sol High
説明
前のページでは「価格は何と一緒に動くのか」を見ました。ただし相関が分かっても、買うべきかどうかはまだ分かりません。さらに意思決定にあたって知りたいのは変化の傾向、つまり「どういう条件の物件が、最も値上がりしてきたか」ということです。
そこで、Y(平方メートルあたり単価)の 年平均上昇率 G を求めます。ただし全体の G を1つ出しても、比較する相手がなく、意思決定の示唆になりません。必要なのは解像度を上げた セグメント——「市区町村名 × 条件A × 条件B × 条件C」という形で区切った小さな集団——ごとの G です。
ここが手作業では到底できない部分です。セグメントの作り方は組み合わせの数だけあります。
- どの変数をセグメント軸に使うか(Null だらけの変数は使えない)
- 数値変数をどこで区切るか(築年数「何年以下」で切るのか)
- 期間が短すぎるセグメント、件数が少なすぎるセグメントをどう除くか
AI には、セグメント軸の選び方から区切りの探索、G の算出、除外の規則までを手順として渡します。 結果は23区それぞれの上位10セグメント、計230件のデータフローになります。
この分析で出てくる G は、「上昇率が最大になる条件」を探索した結果です。たくさんの区切り方を試して、いちばん高い値を選んでいます。したがって G の数値をそのまま将来の上昇率として読むことはできません。 詳しくは本ページ末尾の「Human-in-the-loop のポイント」で扱います。
作業の準備
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前のページまでで作成した「データコレクション1:不動産価格.csv:テーブル1」が、データコレクションに登録されていることを確認します。
-
チャットセッションを開きます。このページでは2回に分けて指示します。1回目でセグメントとチャートを作り、2回目でその結果を AI 自身に読ませます。
AI に作業を指示
- 抽出条件、変数の定義、セグメント軸の選び方、除外の規則、G の算出方法をまとめて指示します。長い指示ですが、どれか一つ欠けても結果の意味が変わります。
データテーブル「データコレクション1:不動産価格.csv:テーブル1」をもとに、下記の分析を実施する。結果をデータフローとして保存し、指示に応じてチャートを作成する。
1. 種類="中古マンション等"のレコードを抽出し、以降の分析のインプットデータセットとする。
2. 下記の通り新しい変数を作成する。
(1) 変数Y=「平方メートルあたり不動産価格」を、「取引価格(総額) ÷ 面積(㎡)」の計算式で作成する。
(2) 変数「築年数」 を、「現在の西暦年 - 建築年」の計算式で作成する。必要に応じて「建築年」を西暦年にあらかじめ変換する。
3. 市区町村コード、取引時期、取引価格(総額)、面積(㎡)、建築年、平方メートルあたり不動産価格以外の変数から、下記の手順でセグメント軸の候補変数を選定・定義する。
(1) 変数のNull件数は全件の60%を超えた場合、当該変数を除外する。
(2) カテゴリ変数の場合、Nullを除いてレベル値をセグメントの区分として使う。ただし、区分値は1つしかない場合は該当変数を除外する。
(3) 数値変数の場合、算出した価格上昇率が最大となる区分値を探索して使う。
4. 下記の手順でセグメント別の価格上昇率を算出する。
(1) 市区町村名を固定のセグメント区分として入れる。
(2) 次に、その他のセグメント軸の候補変数から任意の非重複の3つの変数を選び、それぞれの区分値を特定する。
(2) セグメント条件に該当するデータポイントを抽出し、Y値のパーセンタイルで5%分位未満と95%分位を超えたデータを除外する。
(3) 取引時期をもとに、全期間における変数Yの年平均上昇率Gを下記のように算出する。
(i) 取引時期ことにデータ件数を集計し、20件未満の場合に当該取引時期のデータを除外する。
(ii) 最終的に残った取引時期は4種類未満の場合、当該セグメントを除外する。
(iii) 取引時期の年・四半期情報をX軸とし、セグメントかつ該当取引時期での平方メートルあたり不動産価格の平均値をY軸とし、切片ありの線形回帰法により按分した年平均上昇率Gを算出
5. すべてのセグメントを統合し、年平均上昇率を算出してG0とする。
6. 市区町村名別でG値により上位の10個のセグメントを抽出し、市区町村名、市区町村内順位、G値、G0値、G/G0の倍率、その他のセグメント変数および区分値、該当データ件数、使った取引時期の開始と終了の値、取引時期の数、取引時期別の最大と最小件数を羅列し、データフロー「中古マンション等単位価格上昇率セグメント」を作成してGの順位を示す横棒グラフを作成する。

この指示の組み立て方には、次のポイントがあります。
| 指示のブロック | ねらい |
|---|---|
| 3-(1) Null 60% の足切り | 使えない軸を機械的に落とします。 中古マンション等では土地や前面道路の列がほぼ空です。閾値を決めておかないと、数件しかない変数でセグメントが作られます。 |
| 3-(3) 数値区分の探索 | 築年数を「何年以下」で切るかは、人には決められません。探索を AI に委ねます。 ただしこれが後述する最大の注意点になります。 |
| 4-(2) 上下5%の除外 | 極端な単価が回帰の傾きを支配するのを防ぎます。外れ値の扱いを指示に書くことで、結果が再現可能になります。 |
| 4-(3)(i) 期別20件未満の除外 | 1四半期に数件しかない期の平均は偶然に振られます。期ごとの最低件数を決めておきます。 |
| 4-(3)(ii) 4期未満の除外 | 2点を結べば必ず直線が引けます。最低限の点の数を決めないと、傾きが意味を持ちません。 |
| 5. G0 の算出 | 比較の基準を作ります。G だけでは高いのか低いのか判断できません。G/G0 の倍率にして初めて読めます。 |
| 6. 出力項目の列挙 | 件数・期間・期数まで検証に必要な情報をすべて出させます。 G だけ並んだ表は、確かめようがありません。 |
「件数」「期間」「期数」を出力項目に含めてください。 G の値だけを並べた表は、4四半期・20件で引いた直線も、9四半期・242件で引いた直線も同じ顔をします。どちらを信用できるかは、G ではなくその横の数字で決まります。
AI の作業結果を確認

この例では、次のことが報告されています。
- 23区それぞれの上位10件、計230セグメントを指定項目とともに保存。
- 全体の年平均上昇率 G0=4.0954%。
- 全体1位は中央区の「勝どき × 利用目的=住宅 × 建ぺい率80%以上」。G=56.34%、G0の13.76倍(91件・4四半期)。
- G は「年回帰傾き ÷ 最初の使用四半期の回帰予測価格」で単利按分。数値区分は観測値を境界とする「以下/以上」を全探索。
- 全230件の独立再計算は一致。変数の採否と検証結果も補助データフローに保存。
「全230件の独立再計算は一致しました」は、AI が自分の集計を別経路でもう一度計算し、突き合わせたという報告です。データフローの数字が、チャートを描いたときの数字と同じであることが確かめられています。集計の取り違えは起きていない、という保証です。
ただしこれは計算が正しいことの確認であって、解釈が正しいことの確認ではありません。
セグメントの一覧を確認する
- データフローには230行が並びます。1行が1セグメントです。

列は「市区町村名/市区町村内順位/全体G順位/G値/G0値/G/G0の倍率/セグメント変数1・区分値1/変数2・区分値2/変数3・区分値3」と続き、さらに右側に該当データ件数、取引時期の開始・終了、取引時期の数、期別の最大・最小件数が並びます。
指示の項目6で列挙した項目が、そのまま列になっています。G の数字の隣に、それを支える件数と期間が置かれていることが、この表の要点です。
G の順位を見る
- 230セグメントを G の降順に並べた横棒グラフです。

縦軸のラベルが「全体G順位|市区町村内順位」の2段になっています。1位から24位までを見ると、ある特徴が目に入ります。
| 全体順位 | 区 | G |
|---|---|---|
| 1〜4位 | 中央区(区内1〜4位) | 56.34% / 54.85% / 53.13% / 52.80% |
| 5位 | 港区(区内1位) | 52.55% |
| 6〜9位 | 中央区(区内5〜8位) | 52.41% / 51.92% / 50.61% / 50.61% |
| 10位 | 港区(区内2位) | 49.76% |
| 11〜12位 | 中央区(区内9〜10位) | 47.22% / 46.66% |
| 13〜15位 | 港区(区内3〜5位) | 45.61% / 45.61% / 43.82% |
上位12件のうち10件が中央区で、残りも港区です。16位に江東区、17位に中野区、24位にようやく新宿区が入ります。23区それぞれの上位10件を平等に集めたにもかかわらず、順位の上側が特定の区に偏るという構造が、一目で分かります。
AI に考察させる
ここからがこのページの本題です。230行の表を人が読み解くのは大変ですが、AI は自分が作ったデータフローを読んで解釈できます。
- 区を指定して、上位セグメントの説明と考察を求めます。
「データコレクション1:中古マンション等単位価格上昇率セグメント」を用いて、渋谷区の中古マンション等単位面積価格の上昇率の上位セグメントを説明し、合わせて考察理由、得られる示唆などをコメントください。

- 参考までに、渋谷区の上位10セグメントは次の内容です。
| 区内順位 | セグメント条件 | G | G/G0 | 件数 | 期数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | RC × 駅2分以下 × 築27年以下 | 29.46% | 7.19倍 | 90 | 4 |
| 2 | 3LDK × 駅7分以下 × 築56年以下 | 29.13% | 7.11倍 | 86 | 4 |
| 3 | 商業 × 駅2分以下 × 築54年以下 | 27.35% | 6.68倍 | 115 | 5 |
| 4 | 成約価格情報 × 駅4分以下 × 築12年以下 | 25.01% | 6.11倍 | 87 | 4 |
| 5 | 成約価格情報 × 3LDK × 築44年以下 | 22.99% | 5.61倍 | 90 | 4 |
| 6 | RC × 3LDK × 駅9分以下 | 22.56% | 5.51倍 | 113 | 5 |
| 7 | RC × 商業 × 築13年以下 | 20.50% | 5.00倍 | 242 | 9 |
| 8 | 成約価格情報 × 商業 × 築21年以下 | 19.88% | 4.85倍 | 194 | 8 |
| 9 | RC × 2中住専 × 駅6分以下 | 18.19% | 4.44倍 | 135 | 6 |
| 10 | RC × 3LDK × 築30年以下 | 17.87% | 4.36倍 | 108 | 5 |
- AI の回答です。

注目すべきは、AI が順位をそのまま追認していないことです。回答は4つの段に分かれています。
1. 1位の中身を開いて見せる
使用期間は2023年第3四半期〜2025年第2四半期で、四半期平均単位価格は約193.5万円/㎡から295.7万円/㎡に上昇しました。Gは全23区の基準値G0=4.10%の7.19倍です。同じ使用四半期で計算した渋谷区全体のGも6.12%なので、期間をそろえても強い上昇が確認できます。
G0 は20四半期で計算されていますが、1位のセグメントは4四半期しか使っていません。期間が違えば比較になりません。AI は同じ4四半期で渋谷区全体の G を計算し直して、期間の違いが原因ではないことを確かめています。
2. 都合の悪い事実を自分から出す
1位の北参道駅の取引は、最初の期の 2件/20件から、最後の期には12件/27件へ増えています。平均築年数も、同じ2026年基準で11.25年から8.19年へ若くなっています。したがって、駅近物件の値上がりに加え、後半に新しい物件や価格水準の異なる地区の取引が増えたことも、平均価格を押し上げた可能性があります。
これが構成変化の指摘です。同じ物件が値上がりしたのではなく、後から高い物件が混ざってきただけかもしれない。四半期平均の推移を見るときに最も起きやすい誤読を、AI が先回りして潰しています。
3. 証拠としての独立性を問う
2位と6位には使用取引が50件重複しており、別々の独立した証拠として数えることはできません。
セグメントは互いに排他ではありません。「3LDKが4つも上位に入っている」と喜ぶ前に、それが4つの別々の事実なのか、1つの事実の数え直しなのかを確認する必要があります。
4. どれを信用するかを件数と期数で決める
傾向の安定性では、7・8位が参考になります。 7位は9期・242件を使っており、1期ずつ除外して再計算してもGは18.51〜23.22%でした。8位も8期・194件で、同じ確認では16.73〜21.78%です。
G が最も高いのは1位ですが、信用できるのは7位・8位だと言っています。根拠は**1期ずつ除外した再計算(leave-one-out)**で、G が大きく動かないことを確認したうえでの判断です。
さらに、区分の意味についても釘を刺しています。
「商業」は都市計画の区分、「成約価格情報」はデータの出所の区分なので、それ自体を値上がりの原因と解釈するべきではありません。
5. 示唆と限界
得られる示唆は、駅近RC造、駅近3LDK、商業地域の比較的新しいRC造を、追加分析の対象として優先することです。次に地区・駅・築年帯・面積帯をそろえて比較すれば、物件構成の変化を抑えた価格上昇を確認できます。
今回のGは回帰による単利按分の年率で、同一物件の値上がり率や複利年率ではありません。また、上昇率が最大になる条件を探索した結果なので、29%前後という値をそのまま将来の上昇率として扱うことはできません。
結論は「渋谷区ではこれが儲かる」ではなく、**「次に何を調べるべきか」**です。セグメント分析の正しい出口はここです。
AI は自分が作ったデータフローを読み直せます。 件数も期数も使用四半期一覧も列として保存されているため、「2位と6位で取引が50件重複している」のような照合が、人の手を介さずに実行できます。
逆に言えば、出力項目に件数や期間を含めなかった場合、この考察は成立しません。 指示の項目6で検証用の項目を列挙したことが、ここで効いています。
Human-in-the-loop のポイント
AI に任せきりにせず、次の点は人が確認してください。
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G は「最大になるように選ばれた値」であることを忘れない
これがこのページで最も重要な点です。数値区分は「観測値をしきい値とした以下・以上を全探索し、G が最大になる条件を採用」して決まっています。さらにその中から上位10件を選んでいます。たくさん試して一番良かったものを並べた表ですから、G には上向きの偏りが必ず入ります。AI 自身も「29%前後という値をそのまま将来の上昇率として扱うことはできません」と明記しています。 -
期数と件数を見てから G を読む
渋谷区の1位・2位・4位・5位は4期しか使っていません。年平均上昇率を1年分のデータから引いているということです。7位(9期・242件)・8位(8期・194件)のほうが、値は低くても傾向としては確かです。順位の上から読むのではなく、期数の多い行から読んでください。 -
構成変化を疑う
セグメント内の平均単価が上がったとき、同じ物件が値上がりしたとは限りません。1位では北参道駅の取引比率が2/20から12/27に増え、平均築年数が11.25年から8.19年に若くなっていました。中身が入れ替わっただけの可能性を、必ず検討してください。 -
セグメント同士の重複を確認する
2位と6位では使用取引が50件重複していました。上位に似た条件が並んでいるとき、それは同じ取引群を別の切り口で数え直しているだけかもしれません。独立した複数の証拠と誤認しないでください。 -
区分の意味を取り違えない
「成約価格情報」はデータの出所であって物件の性質ではありません。これが上位セグメントの条件に入っていても、「成約価格情報の物件を買えば上がる」という意味にはなりません。 概要ページの「扱うデータの性質」で説明したとおり、2つの出所は収集方法が違います。 -
G の定義を確認する
G は「年回帰傾き ÷ 最初の使用四半期の回帰予測価格」の単利按分です。複利の年率でも、同一物件の値上がり率でもありません。他の資料の上昇率と並べるときは、定義が同じかを必ず確認してください。 -
投資判断に直接使わない
本ページの G は、過去の取引データから条件を探索して得た記述的な指標です。将来の価格を予測するものではありません。購入や投資の判断には、必ず元データと他の情報源を合わせて検討してください。
使用する LLM により、セグメント軸の選び方・区切りの探索範囲・考察の深さが変わります。特に数値区分の探索方法は結果を大きく左右するので、データフローの「数値区分探索方法」列で実際に何をしたかを確認してください。
参考資料
本ページで分析しているデータは、国土交通省「不動産情報ライブラリ」から取得したものです。画面キャプチャは出所を明示した上で引用として掲載しています。AI が算出したセグメント・上昇率・考察は、GotoAI が Kari の動作例として生成したものであり、国土交通省が作成・公表したものではありません。
- 資料名: 不動産情報ライブラリ「不動産価格(取引価格・成約価格)情報の検索・ダウンロード」
- 提供元: 国土交通省
- URL: https://www.reinfolib.mlit.go.jp/realEstatePrices/
- 閲覧日: 2026年10月13日
- 利用条件: 同サイトの利用規約に従います。出典:国土交通省ウェブサイト(上記 URL)。
データの性質(アンケート調査に基づくこと、取引価格が有効数字2桁に丸められていること、2つの出所が混在すること)については、概要の「扱うデータの性質」を参照してください。
- 本サイトで引用した外部の情報は、Kari の利用例を説明するためのものです。それらの情報の正確性や最新性について、本サイトは保証しません。引用元の内容は予告なく変更・削除されることがあります。
- 本サイトで示した AI の出力は、記載の検証環境で実際に得られたものです。ただし、その出力の正確性や有用性について、本サイトは保証しません。AI の出力は、使用する LLM や設定、実行のたびに変わることがあります。
- 本ページの年平均上昇率 G は、上昇率が最大になる条件を探索して得られた値です。 将来の価格変動を予測するものではなく、投資判断の根拠として用いることはできません。
- 取引価格は有効数字2桁に丸められており、所在地は町・大字レベルまでです。セグメントの平均単価は、この粒度の制約を受けます。
- 画面キャプチャは、掲載時点のバージョンの Kari で取得したものです。お使いのバージョンでは表示が異なる場合があります。
- 本ページで扱うのは実際の不動産取引価格のデータです。購入や投資の判断に用いる場合は、必ず元データと照合し、利用者ご自身の責任でご判断ください。
- 引用元の各機関・団体は、本サイトおよび Kari と提携・推奨関係にはありません。